薫主堂のように明治年間創業では決して名門とは言えない大変歴史ある業界ですが、最近は製造より販売が優先し、線香を収める箱のデザイン、ネーミング、そして香りが生命である線香には何の関係もない当節よく耳にするような耳障りのよい言葉を羅列して、惹句(宣伝文句)で、それこそ需要家をけむに巻くメーカーが多く、有力なのは嘆かわしいことです。手作りという言葉も昨今大はやりで、多くのメーカーが口にするようになりました。誰もが手作りと言い出してますので、当店は昔からの本物の線香を作っていると敢えて申します。父に調香のノウハウを仕込まれ、店主自身も伝統的な香りの方が本物であるとの信念で製造して参りましたので、その点は筋金入りです。製造もオートメーションでは鉛筆の芯のようなきれいな筋の線香はできますが、急速に乾燥させていますので、しなりがなく、見た目の割にはもろいです。やはり伝統的な自然乾燥の方が風合いのある線香ができます。
最近は、微煙香、煙少香と称して煙の出方が少ない「線香のようなもの」がよく売れていますが、香料は燃やせば植物性にせよ動物性にせよ煙が出るのです。形式的に線香をお使いになる方はそれでよいのかも分かりませんが、香りのよい線香は、この「線香のようなもの」ではありません。店主は思想として、これは線香と認めてはいません。沈香、白檀のそれも良質なものをふんだんに入れて、香りを主役にした線香を作っておりますので、本物をお求めの方、こだわり派の方には、いいもの見つけたと喜んで頂いております。このようなこだわりで仕事をしておりますと、事業としては大きくなりませんが、もの作りをするものの良心として需要家を裏切らない商品を作っていますので自信をもってお薦めできます。長口舌になりましたが、是非お試し下さい。
北村 欣三郎 |